仕事の給与は労働の対価ですが、不動産投資で得られる家賃収入は、ほぼ不労所得です。
本業での収入以外に、放っておいても定期的に不労所得が入るのはとても嬉しいもの。
初めて投資用物件を購入してそのことを実感すると、すぐに「もっと不労所得を増やしたい」と考え、2件目、3件目を購入したがる人もいます。
しかし、ちょっと待ってください。
投資にはリスクが付きもの。投資額を増やせば、それだけリスクも大きくなります。
焦って2件目の購入を検討する前に、メリットとリスクを確認した上で最適な投資のタイミングを考えていきましょう。
不動産投資家の約半数は2件以上に投資している
不動産投資をしている人のうち、物件を1件のみ保有している人は約53%。約47%が2件以上の物件を保有しており、平均保有物件数は2.2件という調査結果があります。
(データ出所:株式会社MFS「不動産投資家に関する調査結果」)
アンケートの回答者には、比較的最近購入した人もいると思われるため、物件購入からある程度の年数が経っている投資家に限れば、複数保有の割合はもっと増えるでしょう。
それだけの投資家が複数の物件に投資をしているのは、多くのメリットがあるためです。
複数物件に投資をするメリット
①安定した不労所得が増える
2件以上保有すれば不労所得が増えることは当たり前ですが、それよりも収入が安定するという点がポイントです。
例えば、保有物件がワンルームマンション1室だけだとすると、その物件が空室になれば家賃収入はゼロになります。100か0か、という極端な動きになる訳です。
そして、家賃収入がゼロでも、ローンや固定資産税などの支払いは変わらないため、もし空室が長期間続けば大変なことになります。
一方、2件保有していれば、同時に空室になるリスクを低減できます。
仮に家賃が同じだとすれば、1件が退去しても半分の家賃は得られるので、ある程度は安心できるでしょう。
②リスクを分散できる
例えば、同じ東京でも、墨田区と世田谷区など離れた地域で物件を保有すれば、地域の人気・需要の変化や地震・水害などの被災リスクも分散できます。
また、同じ地域でも、単身者向けワンルームマンションと夫婦向けの2LDKマンション、ファミリー向けの戸建てなど、性格が異なる物件を保有することで、需要の波のリスクを分散できます。
③レバレッジ効果が得られる
不動産投資は通常融資を受けて行いますが、1件目の物件の融資残債がある程度減っていれば(返済が進んでいれば)、2件目の購入資金の融資を受ける際に、1件目を担保の一部にできる可能性があります。
それが可能であれば、頭金として拠出しなければならない自己資金(現金)を少なくできるので、資金効率が良くなります。
このように保有物件を“テコ”にしてより多くの融資を受けることで「レバレッジ効果」を利かせられます。ただし、これはどんな物件でも可能だとは限りません。
④融資条件を有利にできる可能性がある
1件目の賃貸運営が上手くいき、2件目を購入する際には、1件目のときよりも有利な条件で融資を受けられるかも知れません。
また、その際に1件目の融資を借り換えしてまとめることで、全体をより低い金利の融資にできる可能性があります。
⑤物件選びや賃貸運営のノウハウが高くなっている
初めての不動産投資では、購入物件選びも賃貸運営も100点満点という訳にはいかないのが普通です。
しかし、ある程度大家業の経験を積んだ後なら、物件の目利き力や運営ノウハウも高くなっているはずです。
つまり、より良い物件を選び、的確な運営ができるようになっているということです。
複数物件に投資をするデメリット
このようなメリットがあるため、多くの人が複数の物件を保有するようになります。しかし、メリットの裏にはデメリットもあるため注意が必要です。
①リスクの影響も大きくなる
先に書いたように、複数の物件を保有していればそれが同時に空室になる可能性は低くなります。
しかし万が一、何らかの事情でそのような事態になれば、融資の返済や固定資産税は増えているため、受ける影響も大きくなります。家賃収入ゼロの発生可能性は低くなるものの、万が一のときのダメージがより大きくなるのです。
②金利上昇の影響を大きく受ける
現在は低金利が続いているため、より金利の低い変動金利で融資を受ける場合が多いですが、今後長期間にわたって低金利が続く保証はありません。
多額の融資を受けて行う不動産投資では、融資金額が大きくなればなるほど、金利上昇の影響を大きく受けることを覚えておきましょう。
③1件のトラブルが全体に及ぶ
1件目の物件を担保に入れて2件目の融資を受けている場合、1件目の物件に事故などが生じてその収益が大幅に悪化したり、物件が損壊したりしてしまったような場合、トラブルのない2件目の融資にも影響が及ぶ可能性があります。
④管理の手間が増える
例えば、1件の物件でオーナーが対応しなければならない管理上の問題が平均して3カ月(12週間)に1回起こるとします。すると、2件の保有なら6週間に1回、3件の保有なら4週間に1回のトラブル対応が必要、ということになります。
不動産投資はほぼ不労所得だとは言っても、保有物件の数が増えていけば、その管理の手間もバカにならなくなってくるのです。
管理の手間を省くためにサブリースを利用したり、管理会社に任せたりする部分が多くなれば、収益性が低下することも念頭に置きましょう。
2件目の購入タイミングは「資金の余裕」から考える
投資において大切なことは、将来の利益の可能性よりも、損失の危険性をしっかり確認することです。
2件目の物件を購入することで「不労所得が増える」「レバレッジで効率的に資金が運用できる」といったメリットはありますが、そればかりに目を奪われては危険です。
万が一、同時に空室になれば大きなキャッシュアウトが生じるといったリスクも十分に想定しておく必要があります。
したがって、もっとも安全を重視するのであれば、「仮に1件目の家賃収入がゼロになっても、2件目の運営は続けていける」という資金計画を立てることが必要です。具体的には、1件目の融資が完済してから2件目を購入すれば、リスクをもっとも少なくできます。
しかし、そこまで待つ必要はありません。
まず、現時点での1件目の物件の想定売却代金を見積もり、そこに現在の預金資産や収入を加味して、もしいま1件目の収入がゼロになっても、売却すればローンを返済できて、2件目には影響がない、という状態であれば投資をしても安全です。
逆に、もし1件目を売却した金額と手元の資金を合わせても1件目のローンの残債返済が不可能であるなら、2件目は少し待つべきでしょう。
安全な投資ができる資金的な余裕ができていることが、2件目の購入タイミングの必要条件です。
まとめ
不動産投資には、さまざまなリスクもあります。そしてそのリスクは、物件購入直後は現れにくく、年月が経てば経つほど、表面化しやすくなります。
とくに、最初に購入したのが新築物件の場合、数年間は建物が新しいためトラブルも生じにくく、入居者にも好まれるため空室が発生しにくい状態です。
しかし、その状態がこの先も続くと考えるのは危険です。
どんな物件にも生じることになる、築年の経過による賃料低下や大規模修繕の必要性を見据え、慎重に検討しましょう。