ライフスタイルに合わせて働き方を構築していく「働き方改革」の時代に、リタイアのタイミングも自由に決めたいという風潮が高まっています。
今回は、一般的な退職期である60歳代まで働かず、50歳代で現役を引退して悠々自適な暮らしを実現する「早期退職」にはどんな心構えや経済的な準備が必要なのか、見ていきます。
一般的な50歳代のライフスタイルは
総務省の「家計調査」によると、現役で働く50歳代ファミリーの平均月額収入は68万円で、平均月額生活費は61万円。収入額には世帯主のほか、配偶者や子供が働いている場合はその収入も含まれています。
生活費は食費など(36万円)、税金・保険料(14万円)、住宅ローン返済(11万円)の合計額です。収入額が生活費を上回っている現役世代では、毎月の暮らしにある程度の余裕が感じられます。
一方、早期リタイアした50歳代無職ファミリーの平均月額生活費は33万円と現役のおよそ半額になりますが、平均月額収入も18万円に激減します。
無職と言っても、投資用不動産の家賃収入や家族のパート給料など毎月の収入があります。生活費は食費など(25万円)、税金・保険料(3万円)、住宅ローン返済(5万円)の合計です。生活費を削る努力はしているものの収入は減っていますから、さらなる節約または生活費の補填策が必要です。
50歳代の貯蓄・負債状況も見てみましょう。
平均貯蓄額・・・1,704万円
平均負債額・・・652万円
ちなみに40歳未満の平均貯蓄額は691万円、平均負債額は1,341万円です。40代までは負債額が貯蓄額を上回る人が多いですが、50代以降は家計に重くのしかかっていた住宅ローンの支払いを終える世帯も増えてくるため、負債額・貯蓄額の割合が逆転します。
家計の負担が減ったことをきっかけにリタイアを考え始める人は多いと思いますが、「夫婦で船旅に出かけたい」「田舎暮らしをしてみたい」と夢を描く前に、豊かな老後を迎えるためのマネープランを改めて考えたいところです。
もし50歳代半ばでリタイアしたら?
金融庁の調査では、「収入を年金のみに頼る無職世帯は、現役引退後の余生を送るために2,000万円程度の老後資金が必要」という結果が出ています。この試算は60歳代で定年退職した場合のものなので、50歳代で早期退職となればそれ以上の資金を蓄えておかねばなりません。
そこで50歳代での早期リタイアに伴って不足する生活費(月額)を算出してみました。
※収入は、夫婦2人分の公的年金のみであることを想定しています。
50歳代:収入0円ー生活費33万円=▲33万円
60歳代:公的年金20万円ー生活費35万円=▲15万円
70~80歳代:公的年金20万円ー生活費27万円=▲7万円
例えば55歳で退職した場合、公的年金の支給が始まる65歳までの10年間で2,880万円(55歳~59歳:▲33万円×60か月+60歳~64歳:▲15万円×60か月)の生活費が不足します。さらに65~69歳までで900万円(▲15万円×60か月)、70歳から89歳までで1,680万円(▲7万円×240か月)の生活費が不足することが推測されます。
どの程度の資金があれば「悠々自適なセカンドライフ」が可能か?
前述の計算から、55歳の早期退職以降に発生する生活費不足額の合計は5,460万円になります。このほかに子供が医学部に進学するとなれば3,000万円前後の就学費が必要となりますので、50歳代の段階で概ね9,000万円程度の貯えがあれば、80歳代まで安定した生活水準を保つことができます。
もし50歳代で1億円以上の貯えがあるならば、早期退職後はリゾート地での「田舎暮らし」も実現できるでしょう。軽井沢や那須の別荘地にある中古戸建て住宅は1,000万円台から販売されていますし、現在の自宅を売却して購入すれば、手元に現金が残るかもしれません。
ただし都市部と違って公共交通機関が発達していないため、移動はすべてマイカーになります。そのため、車の購入とガソリン代の消費を考慮する必要があります。さらに、山間部は降雪が多く冬は冷えますので、セントラルヒーティング装置の整備費や灯油などの消費もかさむでしょう。
リゾート地は海辺にもありますが、こちらはこちらで塩害や台風被害が懸念されます。サビに弱い車のメンテナンスや、雨風に傷め付けられた建物外壁のリフォーム費用も貯えておかなければなりません。そういった日常のささやかな消費も無職生活者にとっては致命的な負担になります。
まとめ
50歳代はまだまだ働き盛りなのでもうひと踏ん張りしていただきたいところですが、「人生100年」と考えれば折り返し地点、長年思い描いていた夢を実現するには意欲・体力的にラストチャンスの時期かも知れません。
老後の生活資金について考えると不安になりますが、思い立ったら吉日です。身を削って働き続ける以外にも、不動産や株式に投資して資産を育てる方法はたくさんあります。さまざまな資産運用法を上手くアレンジしながら、豊かな余生を構築してください。