高収入な医師の税負担を減らす確定申告

高収入な医師の税負担を減らす確定申告

開業医でも勤務医でも、1月1日〜12月31日の1年間の収入に所得税と住民税がかかります。確定申告とは、それらの税額を確定させるための手続きです。

勤務先が1つの病院のみで、ほかに収入がない場合は、年末に行われる「年末調整」だけで税額を確定できます。一方で、個人医院を経営している人や、非常勤で当直アルバイト・病棟管理をして複数の収入源がある人、または専業で勤務している病院での年収が2,000万円を超えている場合には、確定申告が必要となります。

確定申告では、所得控除額を大きくできれば税額を減らせます。累進課税を採用する日本では所得が多いほど税率が上がり、最高税率は55%ほど(所得税と住民税の合計)にまでなってしまいます。控除できるものは漏れなく申告し、税計算のもとになる課税所得額を減らすことで節税につなげましょう。

事業にまつわる支出はすべて経費にできる

個人医院の経営をしている場合、事業にまつわる支出はすべて経費にでき、儲けから差し引くことができます。会食や贈答品などの交際費も、病院経営に必要なものであれば経費になりますし、白衣などの制服代や従業員の給与、福利厚生費など経費にできるものはたくさんあります。学会の会費や出席するための交通費も経費になりますし、研究にまつわる参考図書も経費です。

ただし医院と自宅がつながっているような場合には、家族が生活に使う部分の家賃や水道光熱費は家計費として、経費とは分けて計上しなければなりません。

また、勤務医の場合は「給与所得控除」であらかじめ経費に相当する部分が引かれて計算がされるため、基本的には経費を計上できません。しかし、この控除額を上回る経費がかかった場合には、特定の支出に限り経費として計上可能な「特定支出控除」を利用できる場合があります。

以下に、所得控除のメニューを紹介します。自身の家計を振り返り、対象になるものはないかチェックしてみましょう。

社会保険料等控除

基本的には主たる職場で給料天引きされますが、例えば「扶養しているお子さんの国民年金保険を納付した」「未納分を追納した」という場合は、それらも合算して控除を受けられます。

医療費控除

自分だけではなく、1世帯でかかった医療費が10万円を超えた場合、超えた分が医療費控除されます。治療にかかる医療費が対象で、診察代や薬代だけではなく、通院費、義手・義足、鍼灸の施術代など、さまざまなものが対象です。

※美容目的の歯科矯正など対象外のものもあります。詳細は国税庁のホームページでご確認ください。

iDeCoの掛金控除

「小規模企業共済等掛金控除」という項目で、掛け金の全額が控除の対象になります。個人医院で小規模企業共済に加入している場合は、その掛け金もここで控除できます。

生命保険料控除

生命保険料と介護医療保険料、個人年金保険料の3つを合わせて最大12万円の控除が受けられます。古いタイプの生命保険の場合は(旧)生命保険料と(旧)個人年金保険料の2つで、最大10万円が控除の対象です。自分がどのタイプの生命保険に加入しているのかは、秋口に保険会社から届く「生命保険料控除証明書」を見れば分かります。

寄附控除

災害被害を受けた地域への寄付やふるさと納税も控除を受けられます。ほかにも、国や社会福祉法人に対する寄附金、一定の特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭、特定の政治献金、公益社団法人や公益財団法人への寄附金、認定NPO法人等に対して、その法人の認定または仮認定の有効期間内に支出した寄附金、特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額も控除の対象となります。

配偶者所得控除

配偶者所得控除は、納税者の収入額によって異なります。合計所得(経費を引いた後の事業所得や不動産所得、利子・配当所得、給与所得控除後の給与所得などの合計)が1,000万円を超える人はこの控除が受けられません。

扶養控除

アルバイトをしている大学生の子供がいる人には注意すべき控除です。

通常、児童手当の対象である中学校卒業までの子供には控除額がありませんが、高校生以上で23歳以下の子供がいる場合は扶養控除を受けられます。控除額は、16〜18歳が一般の扶養親族として38万円、19〜23歳は特定扶養親族として63万円です。

子供がアルバイトを頑張り過ぎて年間の給与収入が103万円を超えてしまうと、扶養控除が受けられなくなります。少しでも節税をしたければ、103万円を超えないように調整してもらいましょう。

ちなみに子供自身は親の所得税上の扶養を外れても、勤労学生の手続きをしていれば年間給与収入130万円までは所得税がかかりません。また、社会保険についても扶養のままでいることができます。

まとめ

申告しなければならない儲けの部分を誤魔化す「脱税」は犯罪ですが、控除できるものを申告することは「節税」と呼ばれる正当な行為です。漏れずに申告することで、税負担を減らしましょう。また、申告忘れに気がついたら修正申告をして、払い過ぎた税を取り戻すことも検討するべきです。そんなときのために、気軽に相談できる税理士さんを見つけておくことも有効でしょう。

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