難関の医学部受験を控え、日々勉強に励む子供には、家族のサポートが必要です。
ところがその方法を間違うと、模擬試験の結果やライバルの成長にただでさえプレッシャーを感じている子供を、さらに追い込んでしまうかも知れません。
ナーバスになりがちな受験生に対し、親はどのように関わるべきなのでしょうか。医学部予備校「メディセンス」東京麹町校の石井悠校舎長がアドバイスを贈ります。
東京麹町校 校舎長 石井 悠 |
医学部受験を取り巻く環境は大きく変わっている
—医学部受験を控える子を持つ親は、どのようなことに悩んでいますか。
当校の生徒は、月曜日~土曜日の9:30~21:30までみっちり勉強をしています。そのため、生徒たちには「帰宅後は勉強をせずに、ゆっくり休むように」と伝えています。
とは言え、家でゆっくり過ごすお子さんの姿に親御様は不安を抱くかも知れません。実際に勉強をしている姿を見ている訳ではありませんから、「学習時間は足りているのかな・・・」と心配になることもあるでしょう。とくに親御様が医師である場合、ご自身の受験生時代との比較でお子さんに口出ししてしまう傾向が強いように感じます。
その結果、親子のコミュニケーションが上手く行かなくなり、お子さんの成績が伸び悩むという悪循環に陥るケースが少なくありません。
—医師である親のアドバイスが上手く響かない原因はどこにあるのでしょうか。
受験を取り巻く環境について、親御様が理解されていないことです。分かりやすいところで言えば、20年前に比べて医学部の偏差値は20も高まるなど、その環境は変化を続けています。
それにもかかわらず、「俺はもっと勉強していたぞ」「次の模擬試験は大丈夫なの?」などと、ご自身の経験から口出ししてしまうと、お子さんはストレスを溜め込むことになります。誰にも相談できないまま爆発し、勉強を投げ出してしまった生徒を、私は何人も見てきました。
生徒のメンタルが落ち込んでしまった原因は?
—親子のコミュニケーションのトラブル事例を教えてください。
日に日にメンタルが落ち込み、成績も振るわなくなっていった生徒の事例です。
その様子に異変を感じた私は毎週面談を実施することにしました。落ち込んでいる原因が分からないまま2~3カ月かけて根気強く信頼関係を構築していったところ、ある日「先生、実は…」と切り出し、親の言葉が大きなプレッシャーになっていることを打ち明けてくれたのです。
このケースでは、生徒のご両親はともに医師。ご自身が高い壁を乗り越えてきた経験から、お子さんの成績が伸び悩む様子に不安を感じたのでしょう。送迎の車中で毎日のように「今日はちゃんと勉強したの?」「次のテストは大丈夫なの?」と声を掛けていたそうです。
すぐに保護者面談を実施し、「ご家庭では勉強についての話を控えてください」と釘を刺しました。現在では、その生徒はプレッシャーから解放され、伸び伸びと勉強に集中しています。
受験生には温かい食事とリラックスできる環境を
—それでは、親にはどのようなサポートができるのでしょうか。
ここで例に挙げた親御様のように、「勉強はどう?」と尋ねることは愛情表現の1つとも言えますが、勉強について「医師になりたい!」という熱い気持ちを持つ本人に任せてください。親御様にできるサポートとは、家で温かい食事を出して他愛ない話をしてリラックスできる環境を整えてあげることです。
予備校の近所で一人暮らしをしながら、あるいは通学圏内に暮らす親戚の家に暮らしながら勉強に励むお子さんに対しては、それほど遠距離でなければ定期的に会いに行ってあげましょう。気軽に会いに行けない場合には、LINEや電話でコミュニケーションを取ることも有効です。
勉強とは無関係な他愛ない会話をするだけでお子さんはリフレッシュでき、また勉強に集中できるようになるはずです。
まとめ
医学部受験を控える子供に対し、医師である親自身の経験からあれこれ口出しすることは、子供のメンタルや勉強へのモチベーションにネガティブな影響を及ぼす可能性が高いことが分かりました。
予備校に通っている場合、勉強のことは講師に任せ、親御さんはそれ以外の食事や生活について「見守る」スタンスでいることが重要なのです。
Becauseでは今後も、医学部をめざす学生さんやその親御さんに向けたコンテンツを発信していきます。
取材協力:メディセンス |