預貯金が決して安全ではない理由

預貯金が決して安全ではない理由

預金とは銀行などの金融機関にお金を預けること、貯金とはお金を貯めること、あるいは郵便局・農業協同組合・漁業協同組合などにお金を預けることです。利子が付き、資産が増えるので、手間いらずのうえに安心・確実と、誰もが行っている資産形成の手段です。

しかし、本当に安心、安全といえるのでしょうか?日本の状況を整理して考察いたしました。

日本の定期預金の金利状況

日本銀行が2015年に公表した「資金循環の日米欧比較」レポートによると、日本の家計の資産構成は「現金・預金」が52.7%と半分以上を占めており、アメリカの13.7%、ユーロエリアの34.4%を大きく上回っています。

たしかに預貯金は、元本割れなどのリスクが極めて低い資産形成の手段です。しかし、全くリスクがないわけではありません。

まず、金利が低過ぎる点です。2015年12月、定期預金の金利は年利0.11%前後、たとえ1,000万円預けても年間1万円しか利息がつきません。これだけで開業資金を賄おうとすれば、一体、何年必要になるでしょうか。

預金はマイナスになる可能性がある

さらにインフレまで加味すると、年間1万円の利子を得られたとしても、資産価値がマイナスになることも考えられます。
おそらくインフレは今後も少しずつとはいえ進むと考えられています。日本銀行はインフレ目標を設定していますから、金融緩和政策を行っていきます。この政策が行われている間、定期預金の金利はほとんど上がりません。それどころか仮に2%のインフレが起きた場合、定期預金の金利が0.1%のままならば資産価値は実質1.9%のマイナスといえるのです。

ならば目標をクリアした時点で日本銀行は金利を上げるかといえば、そうとも限りません。金利を据え置きにすることで日本の財政赤字を減らすことができるからです。

インフレによって物価が上がれば、企業の売上額や個人の所得額は増えることになります。ところが法人税や所得税も増加するため、企業や個人の資産が増えるわけではありません。一方で日本政府は、インフレによってより多く借金を返済できるようになるのです。 ある意味、これは増税と同じ効果といえます。

しかも、国民にすれば一見収入が増える得策と感じられるため非難されることはありません。このチャンスを、1,000兆円を超える借金を背負う日本政府が見逃すはずがないのです。

国債という不安定要素

預貯金の不安材料はまだあります。それは、預貯金が金融機関によって運用されているということです。運用先の多くは国債です。国債も預貯金同様に元本割れのリスクが極めて低い金融商品といわれていますが、こちらもリスクがゼロというわけではありません。

前述のように日本の借金は1,000兆円を超えています。これは日本の国家予算の約10年分に相当する額であり、返済の目処は未だ立っていません。それどころが、最悪の場合は財政破たんすることも考えられるのです。実際、かつて日本は第二次世界大戦後の1946年に財政破たんを経験していますし、最近でも世界を見ればギリシャ、アルゼンチン、ジンバブエなどの例があります。

仮に日本が財政破たんに陥ってしまえば、預貯金の元本は保証されないでしょう。そもそも、預貯金の元本保証は1,000万円までとその利子分のみとしているケースが多いため、それ以上預けている場合には、大きな損失が出てしまいます。

まとめ

一般的に「安全」「確実」と思われている預金ですが、インフレに弱く、必ずしも元本が保証されている資産形成ではありません。
大切な資産を預ける際は、メリットだけでなくリスクも把握した上で預けることが重要です。

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