第2回「収入増」と「支出減」手っ取り早いのはどっち?

第2回「収入増」と「支出減」手っ取り早いのはどっち?

「資産形成」と聞くと「収入を増やすためにアルバイトを始める」「昇進・昇給のために身を粉にして働く」「FXや仮想通貨でハイリターンをねらう」などといったことを考える人もいるかも知れません。

しかし、前回の記事でも書いた通り、多忙な医師の皆さんの中には「お金は欲しいけれど、手間暇はかけたくはない」という人が多いはず。であるならば、手っ取り早い資産形成のポイントを身に付けることから始めましょう。

基本に立ち返ると、資産形成とは「収入-支出+資産×運用利回り」の結果です。つまり、①収入増②支出減③資産運用—3本柱で考えることが重要なのです。

代表的な固定費について

さて、冒頭に述べた3本柱の中で、もっとも手っ取り早くテコ入れができるものはどれでしょうか。

それはズバリ、②支出減です。

①の収入増は、税金という足かせが邪魔をしてきます(累進課税のエグさは医師の皆さんならよくご存知でしょう)。③資産運用はある程度のリスクを負う必要があり、時代の流れや運の要素も絡んできます。一方の支出は、減らせば減らしただけダイレクトに資産形成に寄与してくれる、非常に効果的なアプローチです。

支出のうち、もっとも削減効果の高いものは固定費です。毎月毎月知らない間にかかっていく支出は、少額の削減であったとしても年間であれば12倍と無視できないレベルなります。固定費としては、住居費・携帯料金・保険料などが代表例ですね。

子持ちだと配偶者や子供の教育環境への配慮もある程度必要でしょうが、独身であれば住居費は削減し放題です。職員寮や狭くて古いアパートなんかも、案外住めば都だったりしますので、資産形成のために数年間は割り切ってしまうのも有効です。そもそも若い時期はやれ当直だ、飲み会だと、実質家にいる時間は長くない人も多いでしょう。

私は月数千円の職員寮に住んでいた時期がありますが、例えば東京で家賃10万超えの人と比べれば、住居費だけで年間120万円の差が生まれます。住居費は各種支出の中でもとくに金額が大きいため、支出削減効果は甚大です。

家にはお金をかけたい派も一定数いるので価値観次第ではありますが、支出削減へのインパクトは理解しておきたいところです。莫大な削減効果を捨ててでも、“良い家”に住みたいかどうかを一度考えてみるということです。

積極的に「格安SIM」を利用しよう

そのほか、携帯料金も容易に削減できる必須検討項目です。MNPなど各種キャンペーンに上手に乗っかれば大手キャリアでも安く済ませることは可能ですが、2年ごとに契約し直す煩わしさや、キャンペーンを探し回る乞食根性が必要になってきます。そういった努力をせずにダラダラと長期契約してしまうと、携帯料金が月8,000円以上かかってしまうことも稀ではありません。

そこで格安SIMの出番です。近年はずいぶん一般化したため、すでに導入している人も多いでしょう。

私は格安SIMに変えてもう5年以上になるのですが、月々の支払いは2,000円程度です。端末(海外製SIMフリーiPhone)を4-5年おきに買い替えるので、端末代を加味して月割りしてもトータルコストは3,000円強/月で済んでいます。

ちなみに使い終えた海外製iPhoneはヤフオクやメルカリで結構高値で売れます。また海外旅行時に現地のSIMを安く利用できるというメリットもあります(話がそれるのでここでは割愛します)。そのような隠れた利点を無視しても、上記の例では月8,000円→3,000円ということで、年間6万円の支出減になります。

このように、毎月毎月定期的にかかっているすべての支出を疑う姿勢が大事です。

例えば車を所有すると、ガソリン代・駐車場代・車検代などたくさんお金がかかります。そのトータルコストを月割りしてみて、レンタカーやカーシェアリングの値段と比較してみましょう。使用頻度によっては、都度レンタルしたほうがずっと安上がりなケースも稀ではありません。

トレーニングジムなども同様です。都度利用は月額契約と比較して一般に割高ですが、利用頻度が低ければ支出の絶対額は都度利用のほうが安くなり得ます。

サブスクの罠

毎月支払う固定費は、流行りの言葉でいうと「サブスクリプションモデル」「サブスク」と呼ばれます。Subscriptionは「購読料」「会費」といった意味の英単語です。

「サブスク」は企業にとって収入が安定する(顧客が継続して一定額を支払ってくれるため)かつ増加する(退会するという能動的作業が障壁となるため)システムであり、サービス提供者側にとって好都合です。例えばマイクロソフト(Office365が代表例です)やアドビ(pdfリーダーやフォトショップ・イラストレーターなどのソフトウェアで有名な会社です)は「サブスク」を導入して業績を伸ばしています。

企業が儲かるということはそれだけ消費者がお金を出しているということなので、賢明な消費者は「サブスクの罠」にはまらないよう、そのサービスが本当に必要かどうか注意深く吟味する必要があります。

まとめ

資産形成の基本公式は「収入-支出+資産×運用利回り」でしたね。資産を10万円増やしたい場合、支出アプローチであれば10万円の節約で達成できます。

しかし収入増で達成しようと思えば、額面で17万円以上(所得税33%・住民税10%で概算した場合)の増収が必要です。冒頭で述べたように、収入には税金がかかるためですね。従って、資産形成を図る場合には、支出を減らす方が効率が良いのは明らかです。

アルバイトを増やす、株に手を出すよりも前に、まずは自分の支出が適正か・削減できる項目がないかを検討することをオススメします。

次回は、収入を増やす『運用術』について考えていきます。

この記事を書いた人

Dr.Koala


ギリギリ昭和生まれ。ド田舎の貧しい家で育ち、現在は兵庫県で勤務するアラサーの眼科医。子供の頃お金に苦労した経験から資産形成を目論む一方で、医師としての仕事にもやりがいを感じており、その両立を目指すべく「医師ならだれでも・手間がかからず・高い再現性がある」資産形成手法を追求している。2018年1月に開設したブログ「若手眼科医Dr.Koalaによる、ライフハック・資産形成・財テクの軌跡」では、主に眼科・資産形成・婚活・英語学習などについて記事を執筆中。またTwitterでは婚活芸人(?)として自虐的な娯楽をフォロワーに提供している。

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