投資にまつわるトラブルは、いつになってもなくなりません。冷静になれば「必ず儲かる」などという上手い話はないと分かるはずなのに、なぜ手を出してしまうのでしょうか。
今回は、お金の勉強になかなか時間を割けない多忙な医師が、悪質な詐欺案件に騙されないために最低限押さえておきたいポイントを見ていきます。
詐欺師は高収入な医師をねらっている
あり得ないほど好条件な投資話は、収入の高い医師や歯科医師、あるいは退職金や生命保険金を受け取ったばかりで大金を持っている人のところにやって来ます。「今後、上場したら必ず儲かる」と未公開株の購入を持ち掛けるものや、実態のない会社の高利回りな「社債」を売り付ける詐欺は、昔からよく聞く話です。
このほか最近では、国内では換金ができない外国の通貨を購入させるものや、実態のない事業への出資を募るものもあります。「上場前の仮想通貨を持てば大きく儲かる」や「SNSの広告権で資産を増やせる」と誘う投資詐欺も出てきているようです。
将来のことを考えて、投資に挑戦したいと考えるのなら、自分で勉強して自分で商品を選ぶという姿勢を持ちたいものです。ただ、医師のように忙しい職業だと、投資をしたくても勉強する時間がないということもあるでしょう。そして詐欺師は、そうした医師をねらっているのです。
そのような場合でも、以下の3つのことに注意するだけで、詐欺まがいの案件に騙されるリスクを大きく低減できるはずです。
1.高利回りで元本保証の投資はない
投資商品のリターンは、発行体が事業で得た利益によって変動します。よって、株式や事業への投資について「年○%のリターンを保証します」というのは信じ難いことです。「この株をいま手に入れておけば、上場後に30%以上、いや100~200%の利益になる」などというセールストークには、どのような根拠があるのか考えてみましょう。
投資信託やREIT(不動産投資信託)などの投資商品では、年間の利回りは高くても5%ほどでしょう。リスクの低いものでは、年間の利回りで3%程度です。
投資におけるリスクは、価格が高くなったり低くなったり変動する不確実性のことを言います。リスクとリターンは連動しており、「ローリスク・ローリターン」「ハイリスク・ハイリターン」の組み合わせが基本。「ローリスク・ハイリターン」は疑ってかかるべきでしょう。
そのような投資案件に「いましか」参加できず、「あなただけに特別に」と誘うようであれば、それは間違いなく詐欺です。
仮にそんな案件が実在するならば、勧めている人が利益を独り占めするはずではないでしょうか。セールスマンの言葉は、あなたの購買意欲を掻き立てるための作り話です。そして、上手い話に乗ってお金を投じたが最後。その後、二度と連絡が取れなくなってしまう事例も少なくありません。
2.聞いたことがない海外の投資話はまず疑う
よくある詐欺案件の1つとして、「国内では購入できないお得な金融商品が買えます」というものがあります。海外の商品だから質が良い、リターンが良いという根拠のない話をしてきます。また、実態が分からない投資商品を「金融庁に届け出済みです」などと言って売り付けようとするパターンもあります。
まず、海外の金融商品や海外の市場だからリターンが良いということはありません。それに、日本の金融機関でも海外への投資を行う商品を扱っています。金融庁に届けていると言っていたはずなのに、実際は無登録業者だったということはよくある話です。
理解ができない仕組みや、少しでもおかしな点が垣間見えるような投資話には乗らないことです。
3.まずは自分でエビデンスを集める
投資詐欺の情報を聞いていても、実際に上手い話が回ってくると「本当に儲かるのではないか」という気持ちが芽生えてしまうこともあるでしょう。出資者にそう感じさせるのが詐欺師ですから、無理はありません。
しかし安易に二つ返事はせず、万が一のことを考えてエビデンスを集めることが大切です。どのような仕組みで利益を生み出しているのか、いくら調べても分からないものには手を出すべきではないでしょう。
例えば不動産投資の勧誘を受けたとき。節税対策になると聞いたのならば、どのような理屈で節税になるのか、まずは自分で調べてみるべきです。税理士に聞いてみるのも良い方法です。その上で納得がいかないものや、理解できないものには手を出すべきではないでしょう。
まとめ
投資詐欺に遭いやすい人は、儲け話について他力本願である傾向が強く、勧誘されるとよく調べもせずに鵜呑みにしてしまいがちです。お金をたくさん持っていても、投資について勉強する時間を確保できない医師などは、残念ながらターゲットにされやすいため注意が必要です。
詐欺の手法は多様化しており、次から次へと新たな案件が出てきます。しかし、今回お伝えしたことを念頭に置いて話を聞けば、詐欺に遭う可能性をグッと抑えられるでしょう。頭の片隅に入れておき、美味しい投資話に誘われたときに思い出していただければと思います。