医師がパワハラの加害者にならないために

医師がパワハラの加害者にならないために

2017年に全国医師ユニオンが実施した調査によると、パワーハラスメント(パワハラ)を受けたことがある医師は約3人に1人。セクシャルハラスメント(セクハラ)を受けたことがある女性医師は4人に1人という結果になりました。

これだけ多くの人がパワハラやセクハラに悩まされている背景には、医師の世界に存在する師弟的な関係性があります。今回は、医師がパワハラの加害者にならないために留意すべき点をまとめてみます。

加害者になった場合には大きな代償が……

2020年6月に「ハラスメント規制法」が施行され、大規模病院を含む大企業では雇用管理上のパワハラ防止措置を講じることが義務付けられました。

その背景には、ハラスメント被害の深刻化があります。全国の労働局などに寄せられた相談のうち「いじめ・嫌がらせ」は令和元年度に過去最高に達しています。

ハラスメントは、被害者はもちろん勤務先の病院にも打撃を与えてしまいます。加害者になってしまった場合には、懲戒処分のほか民事上の損害賠償責任や刑事罰に問われる可能性もあるなど、大きな代償を払うことになります。

何気ない行動や言動が「パワハラ」と受け取られることも

今回の法施行にあたり、厚生労働省が示した定義では、①優越的な関係に基づいて行われること②業務の適正な範囲を超えて行われること③労働者の就業環境を害すること―の3要素がパワハラの要件とされています。

医療機関には医師を頂点とした職種間のヒエラルキーが存在していることから、何気ない行動が上記の要件に該当してしまうことがあるかも知れません。つまり、医師はパワハラの加害者になるリスクが高い立場にあると言えます。

「何を伝えるか」よりも「どう伝わったか」

パワハラ対策が強化されることで、「職員に業務を指示しにくい」「部下への指導が難しい」と感じる医師もいるかも知れません。そのような場合、何を意識すれば加害者にならずに済むのでしょうか。

まず念頭に置きたいことは、加害者と被害者では言動一つ取っても捉え方が異なるということです。

パワハラの加害者が「嫌がらせではなく指導」のつもりで取った行動や言動を、被害者側はパワハラと受け取るかも知れません。そのような互いのギャップを認識することが、パワハラ回避の第一歩になります。

また、疲れているときに思わずついてしまうため息や舌打ち、挨拶を返さないことなども、場合によってはパワハラと受け取られてしまうため注意が必要です。

つまり「何を伝えるか」ではなく、「どう伝わったのか」を意識することが重要と言えます。その上で、丁寧なコミュニケーションに努めることが、パワハラ加害者になるリスクを軽減することにつながるでしょう。

DOCTOR’S VOICE

当サイトの掲示板でも、指導医として長年勤務してきた医師の方からの「ここ数年、少し強く注意すると、パワハラだと指摘されるようになってきました。今までのやり方にケチをつけられているようで、息苦しさを感じております。」との相談がありました。投稿に対し、いくつかのコメントが寄せられましたので紹介します。

はじめまして。わたしは指導医として、長年医療の現場に携わってきました。しかし、ここ数年、少し強く注意すると、パワハラだと指摘されるようになってきました。今までのやり方にケチをつけられているようで、息苦しさを感じております。みなさんは若い医師に対してどのように接しているでしょうか?

 

  • 匿名希望

    20代研修医です。投稿者様が息苦しさを感じるように、指導される側もきつい叱責に息苦しさを感じてしまいます。我々が未熟なのはわかりますが、柔軟な対応をしていただきたいと思います。

  • とある指導医

    横から失礼します。投稿者様と同じく指導医をしているものです。指導医という立場の難しさは自分も日頃から感じておりますが、投稿者様の指導がパワハラだと指摘されるのであれば、指導内容とは別の部分で厳しくしすぎているのではないでしょうか? 口調や、言葉遣いなど、今一度ご自分の指導内容を省みてはいかがでしょう?
    長文失礼いたしました。

 

同じような悩みを抱えている方、誰に相談していいか分からないという方は、当掲示板をぜひ活用してみてください。

パワハラの加害者になってしまうことを防ぐためには、どのような行動や言動がパワハラ認定されるのかを理解した上で、日々の言動を見直し、部下や関係者と丁寧なコミュニケーションを取ることが重要です。

部下と良好な関係を築き、誰もが働きやすいような職場環境を作ることは、患者に提供する医療の質向上にもつながるでしょう。

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