厳しさをます病院の経営環境

厳しさをます病院の経営環境

医療現場に立っていない人は「病院はいつも混んでいて、それだけ患者がいるなら、さぞ儲かっているんだろう」と考えることも多いでしょう。しかし、実際は国の政策により年々厳しくなっているのが現状です。
今回は病院の経営が厳しくなっている背景について見ていきましょう。

厳しい病院経営の実態

2000年代に入る頃から少子化による人口減、不況による医療費が払えない人の増加などにより、病院の経営破綻が目立つようになってきました。特に人口減が顕著な地方の病院が多く、2007年には過去最高となる18件を記録しています。

そこにきて近年の国の診療報酬改定は追い討ちをかける形になってしまっています。ご存知のように診療報酬は、保険診療の際に医療行為の対価として計算される報酬です。原則として2年に一度は行われる改定は、基本的には一般的な給与や物価に連動するため、以前は改定のたびに上がる傾向がありました。

例えば、1994年度は診療報酬本体(医療の技術科)プラス薬価で実質改定率が前年度比プラス3.0%、1998年度マイナス1.2%、2000年度プラス0.2%でした。
ところが、2002年度以降、国は医療費の縮減政策により、この報酬を抑える方向に舵を切っています。

さらにここ数年、各病院ではリストラが行われ、多くの医師が病院を後にしました。ただでさえ医師不足だった状況がより顕著になり、1人当たりの業務量が増えていき、より厳しい労働条件となっています。さらに、これに耐えかねた医師が病院を去るという負のスパイラルがおきているのが現状です。

国の医療縮減政策の中で、公立・民間に限らず、病院経営は非常に難しい局面にあるといえます。

7対1病床の削減が大規模なリストラの引き金になる

病院の経営破たんは、2011年以降になってようやく減少傾向に入りました。

2009年10月に、金融機関との共同出資による「企業再生支援機構」が国によって設立されました。企業再生支援機構は有用な経営資源を有しながら、過大な債務を負っている中堅・中小企業、その他事業者の事業再生を支援する官民ファンドですが、少なからず病院もその恩恵に与りました。

さらに同年の12月には、「中小企業金融円滑化法」が施行されました。医業を主たる事業とする医療法人などの場合は、従業員300人以下が対象となりますが、これも当座の資金繰りに対して一服つける要因になったことでしょう。しかし、肝心の国の医療費増加の問題は解決していないのです。

そのため2014年度の診療報酬改定のタイミングで、国は7対1病床の資格条件を厳しくすることを決めました。試算すると2年間で9万床を削除することになります。9万床の削減といえば全体の4分の1に当たるわけですから、大規模なリストラへと繋がりかねません。

変わって台頭してくるのが地域包括ケア病棟や在宅医療が推進されていけば、医師の働き方や勤務形態も大きく変わっていくことでしょう。

ちなみに7対1病棟の入院基本料はもっとも高額で、1日1万5660円です。患者7人に対して看護師1人を配置する、高い質の医療を受けられる病床なのですから、人件費や医療機器に費やすコストがほかよりもかかるわけで、当然のことと思います。

もちろん病院側にとっても収入増を見込めるので、多くの病院がこの資格条件を満たそうとし、結果として全病床の4割に達していました。そのため、7対1病床はそもそも手厚い医療が必要な重症患者を対象とするものでしたが、中には資格条件を満たすために軽症患者も入れてしまうケースもありました。

増えすぎた7対1病床を削減しようと、国は政策転換を図る中で、7対1病床の資格条件のハードルを上げ、包括ケアや在宅医療を推進する方向へと舵を切ったわけです。

一連の改定は病院にとって大きな収入減となり、今まで花形であった7対1病床やICUの担当医は活躍の場が減少しました。これからは高齢化社会に向けた在宅医療や在宅復帰のための地域包括ケア病棟が増えていくはずです。ここで求められるのは、緊急時にも365日24時間対応できる若い力ではないでしょうか。細かいケアや幅広い診療領域に応える総合的な診療能力も必要となってくるでしょう。そう考えるとたとえ経営破たんまでは至らないまでも、勤務医がリストラの対象になる可能性は少なからずあるかもしれません。

あるいは在宅医療などの療養・慢性期医療に対するニーズが高まる中では、個人開業による地域の診療所などが増えていくのではないでしょうか。考え方によっては、勤務医から開業のチャンスが到来しているとも考えられます。

まとめ

このような先行きが不透明な時期こそ、リスクに備えるべきだと考えられます。将来のリスクに備えることは、転職することでもなく、フリーランスになれる専門性を磨くことではありません。確かな資産を形成することこそが、備えとなるのです。

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